コロンビア大学シーナ・アイエンガー教授の「選択」の授業5回目(最終回)の放送は、「幸福になるための技術」です。
「幸せになるための選択は何か。そして、それを阻むものは何か」を探っていきます。
「大きな選択だけが幸せに結びつくのではありません。日々積み重ねる小さな選択が結果として幸せになるカギとなるのです。」
人はどうしたら幸福になれるのか?・・・アイエンガー教授は真向からこの問いに挑みます。

幸せを阻む障害物を取り除く秘訣をいくつか挙げてきましたが、ここで最初の設問に戻りましょう。
「幸せになるためにはどんな選択をすればいいか。」です。
ここで大きな問題になるのは、どうやって直感と理性をすり合わせていくかと言うことです。
前に、「情報に基ずく直感」の話をしました。
情報と理論に裏付けされたことを何度も繰り返し実践するうちに、それがだんだん直感のようになっていく。
この理性に裏付けされた直感こそ必要なものだという話をしました。

でも、このやり方は「幸せとは何か。」という問題では使えません。
このやり方はパフォーマンスの結果が数値化され測定可能な形で出てくるときしか使えないのです。
幸せは常に変化しています。

では、どうしたら自分をより意味深い決断へと導くことができるのか。
直感が教えてくれるのは、あなたがたった今、欲しいものは何かという情報です。
直感は、あなたが明日もしくは明後日、欲しいものは教えてくれません。
直感は、今この瞬間に欲しいものしか教えてくれないのです。

美味しそうに見えるチョコレートケーキ・・・
でも、チョコレートケーキを食べた数分後にはそんなに美味しそうには見えなくなる。

では理性、理性は何を教えてくれるのか。
理性はあなたがほしがるべきもの、明日、明後日そして10年後にあなたが欲しくなるであろうものを教えてくれます。
何を欲しいと思うべきかを計算するにあたって、理性は測定可能なもの、数値をより重く扱う傾向にあり、それらを客観的な尺度で測定します。
でも理性は、あなたの直感にとって意味のあるものを測定する尺度は持っていないのです。
ここに問題があります。

つまり明日のあなたを幸せにするものは何かについては直感でも理性でも分からない。
結婚した方がいいのか?しない方がいいのか?、Aという仕事を選ぶべきか?Bを選ぶべきか?、子供を産むべきか?どうか?
何が私たちを幸せにするのでしょう・・・そこで私たちは立ち往生してしまい、ジレンマを抱え込むことになる。

でも、がっかりすることもありません。
何故なら、直感や理性の限界を認識することでこれまでのことよりすっと上手に、選択できるようになるからです。

あなたが何かを選ぼうとしているとしましょう。
二つの仕事の内、どちらかを選ばなければならないとします。
その時、どうやって選びますか?
自分の心の中だけで決めるということはありませんよね。
私たちは選ぶという行為を、個人を掘り下げることだと思いがちですが、外の世界を見ることがとても役に立つのです。

外の世界を見るとはどういうことか?
それは、他の人の選択を見ることです。
Aという仕事を選んだ人を見て、どうなったかを観察し、あなたがその仕事を選んだ場合の数年後の自分の未来を垣間見ることができます。
Bという仕事を選んだ人を見ても、あるいは結婚した人を見ても、しなかった人を見ても・・・
でも、彼らに直接「幸せですか。」と聞くのは意味がありません。
人間は自分が選んだことに順応するものです。そして大抵、「幸せだ。」と、答えます。
ですから、彼らを観察し誰が幸せそうに見えるかを、自分の直感に聞いてみてください。

直感に問いかけて、こっちは幸せそう、こっちは幸せそうじゃないと結論を出すします。
その結果、「あの人は幸せそうだ。」と、いう答えが出たら、あなたもその人と同じような経験をしてみると幸せになれるかもしれません。

理性的な分析は答えを出すのに役立ちます。
でも、これまでの講義でお話しした、個性のバイヤスの罠に気を付けて・・・
私たちはみんな、自分は他人とは違うと思っているけれど、実際はそれほどの違いはない。
自分が他人とそう変わらないと把握しておくことはいいことですし、生きていくうえで役に立ちます。
人がやってみてネガティブな結果が出たことは、あなたがやってもだダメな可能性が高いのです。

そしてダメそうだと思ったら、もしネガティブな結果が出てしまったら、それに対処する方法があるだろうかと考えてみてください。
もし、それが無いのだとしたらそれはあなたにとって正しい選択ではないのかもしれません。

私たちには直感と理性という二つのツールが与えられています。
直感と理性とを使い、自分の外の世界を見ることで長い目で見れば何が自分を幸せにしてくれるのかを突き止めることができるのです。
でも、そうやっていろいろと考えたことでも、自分の選択を修正しなければならなくなったらどうしようと心配になることもあるでしょう。
いいんです。後悔するのは当たり前だと思ってください。

科学的なリサーチによって人間は
しなかったことでの後悔 2 : 1 してしまったことでの後悔
その割合が2対1であることが分かっています。
実際に選択をする際にある程度分析をしてからのものであるならば、チャレンジする価値がある場合が多いのです。

私たちは選択をしたら仕事は終わりだと思いがちです。
実際はそこからが始まりです。
自分がした選択を成功させるには、その選択を成功させるための選択を日々重ねていかなければなりません。

科学の助けを借りることで、私たちはより良い選択をすることができます。
何故なら選択が成功する確率を上げられるからです。
選択という行為の本質は芸術です。
なぜ芸術かというと、その人その人の人生で選択の結果は違ってきますし、全員が同じことを成し遂げようと思っている訳ではないからです。
それに他の人から学ぶことはできますが、同じ方程式にそってやっていけばいいというものでもありません。
人を真似して同じ選択をしても、結果が同じとは限りません。

選択を成功に導くのはあなたがあなたを良く見つめることが必要です。
その過程で知りたかった自分の一面を発見してしまうかもしれません。
それをより良い選択に生かしていきましょう。

今回の講義で、アイエンガー教授が明らかにした幸せになるための選択そのヒントをもう一度ここでおさらいしましょう。

<幸せになるために選択を惑わす障害>

・数値にこだわりすぎること・・・数値化できることに惑わされない事、それには直感が挙げる声を聞き逃さない事です。特に障害を避けることに関して、直感の信頼性は高いのですから・・・

・自分の欲しいものがわからない・・・私たちは時に自分が欲しいものが分からなくなってしまいます。目の前の事に直感は弱いからです。将来のことを考えられるのは理性で、直感と理性のバランスが重要です。

・幸せをもたらすものへの過度の期待・・・幸せを求めるととかく物やお金に目標が向かいがちです。その幸せの中身をもう一度考えてみてください。物やお金は手段であっても、本当の目標ではありません。幸せをもたらすもの本当に価値あることにお金は関係なことが多いのです。

・分かっていても間違った選択をしてしまう・・・私たちはいつも誘惑に負けやすい。理性で計算しているかのように振る舞っていても、その時だけの直感にそそのかされ間違った選択に導かれてしまいます。直感が下そうとする選択には明日の事は考慮されていないからです。

歴史上の偉人はどこかで困難な選択を乗り換えてきた人たちです。
1回目の講義で私は、現代社会で成功した人の成功のカギとなった資質は、他の人が選択の余地がないと思うことに選択を見出す資質だと言いました。
でも、成功した個人に共通する資質はもう一つあります。
それは、目的を達成するために真剣に選択をいう芸術を実践していく強い意志の力です。
私たちの存在も芸術だと考えることもできます。
私たちは選択することで、傑作を作り上げていきます。
決断を下すごとに、自分という人間の姿を石から彫刻を掘り出すように作り上げていくのです。
私たちは皆、選択という進化を通して自分自身を発見するための彫刻を続けているのです。
私たちが今日、何を選択していきなり人生が変わるとはあまり考えられません。
でも、選択を日々積み重ねることによって、私たちは人生を替え、満ち足りた人生へと近づいていけるのです。

偉大な作家、ブラナリ-・オコナーの言葉に
「私は 自分が知っていることを発見するために書く」と、いう言葉があります。
これを、私なりに書き換えてみると
「私は自分が何者かを発見するために選択する。」
そして、そのプロセスにおいて私たちは「最も美しい唯一の自分」を造り上げることができるのです。

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素晴らしい講義でした。
こうして書き留めてみると、聴くだけでは理解できていなかった部分も読み取ることができます。
日々、他者を尊重し、他者を理解し、自分を見つめ、最良の選択を求めながら失敗を繰り返していこうと思っています。
明日の「唯一の自分」を目指して・・・