コロンビア大学シーナ・アイエンガー教授の「選択」の授業5回目(最終回)の放送は、「幸福になるための技術」です。
「幸せになるための選択は何か。そして、それを阻むものは何か」を探っていきます。
「大きな選択だけが幸せに結びつくのではありません。日々積み重ねる小さな選択が結果として幸せになるカギとなるのです。」
人はどうしたら幸福になれるのか?・・・アイエンガー教授は真向からこの問いに挑みます。

幸せになるための選択を惑わす障害
<分かっていても間違った選択をする>
そんなのおかしい・・・と思うでしょう。分かっているのに選ばないなんて・・・
4歳の子供がいます。その子を部屋に連れてきてこう聞きます。
「マシュマロ1個とマシュマロ2個、どちらが良い?」
「マシュマロ2個」
「じゃあ。ここに座って私が戻るまで待っててね。そしたらマシュマロをも一つ上げる。
でも、待っていなかったら、今ここに置いてあるマシュマロ1個だけよ。」
さて、どうなったでしょう。

このマシュマロテストは、コロンビア大学の研究者ウォルター・ミッシェルが行った古典的な調査で大変有名なものです。
待てば報酬が得られるというテーマは、セルフコントロールの古典的なテーマなのです。
私たちはどうやって自分を律することを学ぶのでしょう。
待ちきれずにマシュマロを食べてしまった子供たちは70%もいました。
大人ですら誘惑に負けないのは難しいのに4歳の子供たちですから・・・

誘惑が目の前に現れたときどうやって対処するればいいのか?
オスカー・ワイルドは
「誘惑から逃れる最もいい方法は、誘惑に屈することだ。」と、言っています。
誘惑にさらされたとき、私たちの精神の中では何が起きているのでしょう。
これまでの講義の中で、直感と理性との戦いについてどう折り合いをつけるかを見てきました。

私たちは誘惑に直面したとき直感と理性という二つの異なるシステムが自分の中でぶつかり合うことを経験します。
直感はこう言います。「これがほしい、これがほしいんだよ。今すぐ。」
でも、理性はこう言うのです。「やめておいた方がいい。それはお勧めできないなぁ。」

教授は学生たちに質問します。
「この教室を出る前に、番組から皆さんに100ドルくれるとします。でも、今日受け取らない人には1か月後に120ドルの小切手が送られてきます。」
今日100ドルもらって帰ると答える学生は多い。1か月後という学生もまあまあ多い

「では、番組は1か月後に100ドルの小切手を送ってくる。でも、2か月後まで待てば120ドルの小切手を送ってきます。」
1か月後に受け取るという人は少なく、2か月後という学生が圧倒的に多い

どちらを選ぶかはあなた次第です。
だけど、「マシュマロテストを思い出してみて」と教授は話します。
今日の100ドルと1か月後の120ドルは大した違いではないかもしれないけれど、人生の中で常にこのような選択をしているとすれば誘惑に負けた結果20ドルの違いが積みあがっていき、気付いた時にはあなたの銀行口座は空っぽ、定年退職後の資金は「0」と言うことにもなりかねません。

マシュマロテストは1960年代に行われ、言うことを聞いて待つことのできた子供たちの追跡調査は、今も続いています。
誘惑に負けなかった子供たちは、高校生活でも問題を起こすことが少なく、SAT(大学進学適性試験)のスコア―も高い、大学に通う割合も高かった。
大人になってたばこやアルコールや犯罪にてをそめる確率が低い。
大学を卒業した後も、比較的収入の高い日仕事に就く可能性が高く、より健康的な生活を送り、離婚率も低い。
彼らへの追跡調査は、今こうしている話している間も続けられているのです。

セルフコントロールはとても重要です。
これはマシュマロを我慢できなかった70%だけの問題ではありません。
アメリカでは推定40%~60%の人が不倫をし、30%の人が定年退職後の生活のための貯蓄をしておらず、3分の1の人が肥満です。
どうすれば誘惑にうまく対処できるのでしょうか?

最も過激な考え方は誘惑にすべて屈することですが、もっと一般的な方法は誘惑とのバランスを取ることです。
直感は「こればほしい、これが・・・」と、言ってくる。
直感が欲することをすべて拒絶していたら、人生は楽しくないですし、みじめです。

逆に理性は、「いい子にしろ、いい子にしろ」とささやく
この二つをどうやってすり合わせたらいいでしょうか。
お勧めの選択は「あなたにとって大切な物とは何か?」を知ることです。
あまりにも自分をコントロールしすぎて、理性にしたがってばかりいたら何の楽しみもない人生になってしまい、これもまたみじめな気持になってしまいます。

自分にとって本当に大切なものは何かを知って、理性を使ってルールを守る。
状況に対応できるようにするためには、自分をコントロールする能力を直感と同じレベルで発動させればいい。
つまり、「習慣にする」ことです。

例えば、クッキーは家に持ち込まない決め習慣にすれば、食べたいと思ってもすぐにはない。
セルフコントロールが自動的に働いて、肥るようなものは食べないで済むことになります。
もし、毎日毎日セルフコントロールすべきだろうか?とか、スポーツジムに行くべきだろうか?とか、老後のために貯金すべきだろうか?とか
いちいち自分に問わなけばならなければ、これは絶対にやりません。
直感の誘惑に負けてしまいます。
セルフコントロールを選択ではなくではなく習慣にすることによってのみ、セルフコントロールは直感と同じレベルで発動しあなたはすべきことができるようになるのです。