コロンビア大学シーナ・アイエンガー教授の「選択」の授業5回目(最終回)の放送は、「幸福になるための技術」です。
「幸せになるための選択は何か。そして、それを阻むものは何か」を探っていきます。
「大きな選択だけが幸せに結びつくのではありません。日々積み重ねる小さな選択が結果として幸せになるカギとなるのです。」
人はどうしたら幸福になれるのか?・・・アイエンガー教授は真向からこの問いに挑みます。

<真実の自分にたどりつくための障害物>
・幸せをどう定義するか?
「幸せとはなんでしょう」と教授は学生たちに質問します。
「基本的なニーズを満たされていること。」「不満に思うようなことがないこと。」・・・快適であること
「他をわずらわず、自分に満足していること。」・・・平和で満ち足りていて、足りないものは何もなく、何もほしいと思わない状況
「ストレスを感じない状況」「何も心配ない状況」
このように、快適であること、ストレスがないこと、良いことが多いこと、成長する、自分の環境をコントロールし影響を及ぼし自分で決定すること、人生の目的を持つことなど幸せの定義は様々です。
それにしてもどうして幸せの定義がこんなにもたくさんあるのでしょう。

幸せの定義は、これだというものはありません。
そんなものがあれば私たちはみんな幸せになっているはずです。
では、幸せのための選択を惑わす障害物は何なのでしょう。
この数十年間の調査で人を不幸にするもの、人の幸せを阻むものは何かということが体系的に明らかになってきました。
人生を歩むときに私たちの人生をつまずかせるものは何か、障害物を出会ったらどう対処すればいいかをお話ししてみます。

大きな障害物に出会ったとしましょう。
その障害物は普遍的なものだとします。
私たちは論理的に幸せへの道筋を見つけることができるはずなのです。

子供のころ問題が起こると、紙に書いたり心の中でその問題のいい点と悪い点(プロ(Pros)&コン(Cons))を考えてみました。
アメリカの学校で一般的に行われる分析の手法です。
これをすると、どんなときに助けになってどんな時にならなかったでしょう。

この方法を使った一番の有名人は、ベンジャミン・フランクリンです。
友人からどっちを選べばいいか分からないから助けてくれと言われたときに、フランクリンはこう答えました。
「どっちを選べばいいかは教えてあげられないが、どうやって選べばいいかは教えられる。」
「先ず、紙を取り出し半分に切る。片方にいい点を列挙し、もう片方に悪い点を列挙する。」
「四日間考えてみて、列挙しうる点をすべて列挙したと思ったら、次にそれぞれの点の重さを考えてみるんだ。」

教授は数年前、ある研究機関から選んだ大学卒業前とMBA取得者を対象に調査を行いました。
全員就職活動中の彼らの最終学年の1年間の活動を追ったのです。
先ず、学生たちを二つのグレープに分類しました。
「追及者のグループ」・・・理性で追い求める追及者のグループは、理論に則った分析を行います。プロ&コンで考えたり、キャリアカウンセラーに相談したり、企業ランキングを活用したり、ネットを使って調べたり、できるだけ多くの企業に履歴書を出したりしました。
「満足者のグループ」・・・直感で満足を求める満足者のグループは、直感にたよって活動します。「いい感じだ!」これならOKという感じです。
このように、それぞれの就職活動に対する姿勢が大きく違うのでした。

結果を見ると、「追及者のグループ」の方が採用通知をもらった数も多く、給与も平均して20%高く、りっぱな成功だといえるでしょう。
でも、仕事における満足感ややりがいになると、全く逆の結果が出ました。
「満足者のグループ」の方が、幸福度が高かったのです。

幸せになるための選択を惑わす障害-①数値にこだわること
何が自分を幸せにするかを決める時、直感は信頼できる尺度とは思わないかもしれませんが、数値よりも直感こそが幸せへの決め手です。
「何だかこれ気に入らないな」と思ったら、きっとそれは失敗をもたらします。
直感を無視してはダメです。直感はあなたを悲しませることを避けることにかけては信頼性が抜群なのです。