コロンビア大学シーナ・アイエンガー教授の「選択」の授業5回目(最終回)の放送は、「幸福になるための技術」です。
「幸せになるための選択は何か。そして、それを阻むものは何か」を探っていきます。
「大きな選択だけが幸せに結びつくのではありません。日々積み重ねる小さな選択が結果として幸せになるカギとなるのです。」
人はどうしたら幸福になれるのか?・・・アイエンガー教授は真向からこの問いに挑みます。

最終回のテーマは「幸せになるための技術」毎日より良い選択をしていくと言うことです。
これまでの講義で「選択の力」について話してきました。
私たちは何故、選択をしたがるのか。
選択をするとき、文化の影響は避けて通れませんでし、どうやって選択したかや各々の考え方にも影響を受けました。
また、直感と理性の役割・・・直感と理性をどうやってすり合わせて良い選択をしていくのか。
また、あふれかえる選択肢をどうやって使いこなすかのテクニックについても話し合いました。

今回話し合うのは、問題の中で最も難しい問題、すべての事柄にもっとも関連のある問題です。
どうすれば意味深い人生をおくるのに役立つ選択がすることになるのか?
・・・「どうすれば幸せになれるか」です。

幸せはとても重要なことで、誰でも幸せな人生を送りたいと努力しています。
人生に何を望むかと問われたら、私たちはきっと
「充実した人生を送りたい。」
「人として幸せになりたい。」
「人としても成功したい。」
と、答えるでしょう。

人類は大昔から幸せについて考えてきました。
哲学者(プラトン・ベンサム・カント・・・)はもちろん、哲学者でない人でさえ幸せについて雄弁に語ってきました。

アメリカ人ももちろん幸せを求めてきました。
幸せを売る商売はとても利益を上げています。
本屋に行けば、自己啓発の本が山積みです。
一番早く売れていく本は、幸せになる方法を説いた本です。

幸せになる秘訣は「真実の自分(インナーコア(内なる核))」を、発見することです。
つまり自分が何者であるかを見出し、自分の人生がいかなるものであるかを知ることです。

この「インナーコア」を追求するにあたり、真実の自分を自分の中に見いだせれば幸せに近づけると思ってしまいがちです。
「真実の自分」を見いだせれば、「インナーコア」に簡単にたどり着けると期待してしまうのです。
でも、結局は予想していたほど幸せにはなれず、「真実の自分」を見出すことに縛られて「こんなはずじゃない。」と終わってしまうのです。
それは、私たちがその「真実の自分」を見出すプロセスにおいて間違ったステップを踏んでいるからであり、その結果として真実でないものを選択してしまっているからです。

偉大な芸術家、ミケランジェロは「自分の彫る彫刻はすでに石の中に潜んで知る。」という名言を残しています。
後は、余計なものを削り取っていくだけなのです。
現在私たちが考えるアイデンティティもこの考え方に非常によく似ています。
・・・するべきだ。
・・・するべきでない。
そういう層の奥底に、常に変わらない自分自身がある。

私たちの仕事は、その自分自身を見つけ出すことです。
「個人を探る旅だ」ということができるでしょう。
表面よりはるか深いところに、余分なものをすべて投げ捨てたところに、「永遠なる自分自身」が潜んでいるのです。
この「真の自分自身」を掘り起こすのが、他でもない選択です。

この作業は自分を幸せにするプロセスの一部ですが、考えてみるとこれはかなり負担の大きな作業です。
人がする選択のひとつひとつは、個人個人の反映です。
アルベール・カミュが言った通り「人生とは すべての選択が積み重なったもの」なのです。
つまり選択をする度に、それが自分を幸せに導くかどうかを考えなければならないということですが、実に大変なことになるのです。