コロンビア大学シーナ・アイエンガー教授の「選択」の授業3回目の放送は「最良の選択」です。
より良い選択をするための実践的なノウハウを伝授します。
私たちの選択のより大きな根拠となるのは「過去の記憶」です。
その記憶がいかに曖昧なものであるかを、教授が鮮やかに紐解きます。
過去の間違った選択をしていても、ついまた同じように選択をしていませんか?と、教授は問いかけます。
その間違いをしないために選択の記録「選択日記」をつけようと、教授は勧めるのです。

直観とはいったい何なのでしょうか?
おそらく20世紀のもっとも偉大なノーベル賞受賞者で社会科学者のハーバード・サイモンは直感をこのように定義しました。
「直観とは認識以上のものでの、それ以下のものでもない。認識の一つのパターンである。」

「情報に基づく直感」を身に付けるためには、明らかに「経験」が必要です。
私たちが日ごろ食べ物の好き嫌いを認識しているのも「情報に基づく直感」です。
何度も繰り返すことによって、情報を分類、整理する能力が培われるのです。

でも、練習だけで身につくものではありません。
同じ経験をしていても「情報に基づく直感」が養われる人と養われない人がいるからです。
フィードバックも必要なのです。
何が良くて、何が悪かったのか?
何が原因で失敗したのか?成功したのか?
フィードバックを大切にするためには、目標をはっきりさせておくことも必要です。
それが結一、自分がどれくらい進歩しているのかを知る基準になるものだからです。

また、失敗したら別の方法を試すという実験も重要です。
練習→フィードバック→実験を繰り返すのです。

「情報に基づく直感」がどのように機能したかを、チェスチャンピオンのガルリ―・カスパロフを例にとって説明します。
カスパロフが今、8手先を考えているとしましょう。
もちろん彼のような人はもっと先の事まで考えていると思いますが・・・
ここでは8手先としておきます。

もし、彼があらゆる手のすべてを考慮しているとしたら、銀河の星の数ほどの選択肢ができてしまいます。
でも、彼はそうはしません。
彼は個々の駒や一つ一つの動きを見るのではなく、全体を一つの攻撃の回路としてあるいはパターンとしてとらえます。
そうすることで、不必要なパターンを素早く排除して少数の重要な選択肢に標準を合わせることができるのです。
難しいプレーをするのではなく、賢いプレーをしているのです。

「情報に基づく直感」で得られるものは何か?
自分の知識の限界を知る能力です。
更にその能力はあなたを過信から守ってくれるのです。

投資家のウォーレン・バフェットが毎年開く会合は、資本主義のウッドストックと言われています。
彼は世界中で投資の天才であり指導者であると一目置かれています。
その秘訣はなんでしょう・・・
「情報に基づく直感」を持つ人は「匂いをかぎ分ける能力」が磨かれるのです。
彼の面白さは、選択する事ではなく選択しない事に有ると思います。

彼は1990年にすべてのIT株への投資を拒否しました。
「市場でなにが起こっているのかはわからない。これらの会社はまだ不安定なのに高い値が付きすぎている。どうなってるんだ?」
「理解できないものに投資する気はない」と言って・・・
ウォーレンの勘は鈍ったという文字が紙面に躍りました。
しかしその後、IT企業の株価が暴落したことを思えているでしょうか。

孔子も言っています。
「知るを知るとなし 知らざるを知らずとなす これ知るなり」

「情報に基づく直感」とは、理性的な選択を通じて得た情報をもとにした直感です。
理性的な選択は、何度も繰り返すことで習慣になり、直感と思えるまでになるのです。
情報と理性を別々に置くとすれば、
直感=情報×理性 ということになります。

ガルリー・カスパロフはどうやって決断すればいいかと聞かれたとき、「先を見ないことだ」と答えました。
「大切なことは、今そきにある選択肢に集中し、それが何かどんな要素が含まれているかよく見ることそれらを正しく評価すれば、何を選ぶべきかは自ずと見えてくるはずだ。」と、答えたのです。

どうすれば、「情報に基づく直感」を身に付けられるでしょうか。
誰にでもできる簡単な方法があります。
誰もが分析や選択をするときに使える新しい方法は、選択日記を付けることです。
しばらくの間、少なくとも週に1度はその日記に、自分がした選択を書き出してみるのです。
小さなものでも、大きなものでもかまいません。
そしてその選択について考えてみてください。(フィードバックする)
どんな思考プロセスを経たのか。何がうまくいって、何がうまくいかなかったのか?
その選択が、どれだけ成功したかの点数をつけてください。
時間が経つと記憶は当てにならないから、点数をつけることは有効です。
これを定期的に行い、しばらくして振り返るとパターンが見えてきます。

上手くいかなかったときに共通している特徴は何か?
上手くいったときに共通している要素は何か?
と、いったことが分かってきます。

誰にでも良い選択をすることは「情報に基づく直感」を養うことで可能になります。
「情報に基づく直感」を養うことは非常に価値があります。
それは何故かと言うと、すべての人が自分がくだした選択によって評価されることになるからです。
素晴らしいリーダーは選択の科学をひたむきに実践する人であり、私たち一人一人にそれを身に付ける力がある。
今こそ始めるときなのです。
と、教授はこの授業を終わりました。

とても、充実した内容の濃い授業だと思います。
そしてこうして書き留めることで、さらにこの授業の素晴らしさを感じているのです。